江戸時代にタイムスリップ!うだつの町並みを歩く
うだつの町として知られる美馬市の脇町は、江戸時代中期から昭和初期にかけて建てられた商家が並ぶレトロなエリア。地元で長年活躍するボランティアガイドの解説とともに、みどころやご当地グルメをご案内します。
まずはうだつの町並みを散策
写真左:文政12年(1829年)に脇町で大火災が起こったあと、うだつを設けることが増えたといわれる。 写真右:正木さんは阿波藍で染めた法被を着て、全国から訪れる観光客に脇町の魅力を伝えている
江戸時代に阿波藍の集散地として栄えた脇町は、「卯建(うだつ)」を掲げた商家の屋敷が残ることから、うだつの町として知られています。
「うだつとは、隣家への延焼をおさえるために、建物の二階部分に設けられた防火壁です。うだつを作るには莫大な費用がかかることから、いつしか富や地位の象徴に。そこから“うだつが上がる・上がらない”ということわざが生まれたといわれています」。
そう教えてくれたのは、「脇町うだつの町並みボランティアガイド連絡会」の正木文子さん。脇町には現在も約50の立派なうだつが残っており、往時は実に活気のある商家町であったことが伺えます。
脇町屈指!豪商の藍屋敷を見学
写真上:吉田家住宅はうだつの上がった立派な店構え。 写真下:庭は小さく、商いと居住のための空間を広くとってあるのも、商人屋敷ならでは
ガイドの正木さんが続いて案内してくれたのは、脇町に並ぶ商家のなかでもひときわ立派な「藍商佐直 吉田家住宅」。
こちらは寛政4年(1792年)に創業し、「佐直」の屋号で知られた藍商人・吉田直兵衛の屋敷です。「吉田家住宅の敷地は、なんと約600坪。敷地内には江戸時代の中期~後期に建てられた主屋や、3重の頑丈な扉を設けた蔵など5棟が往時のまま残っています」。
かつて脇町で一、二を競う豪商だったという吉田家。往時の大商人の暮らしぶりを伝える建物は現在、美馬市指定文化財となっています。
写真上:主座敷では、棋士の佐藤康光氏と羽生善治氏が対局した様子を再現。 写真左下:意匠を凝らした欄間や、兎や袋のモチーフで縁起をかついだ釘隠しなど、細部まで見ごたえがある。 写真右下:吉田家への嫁入りに使われた江戸時代の籠も展示
吉田家住宅は内部の見学も可能。南町通りに面した玄関から中に入ると、土間から帳場へと続く「みせの間」があります。主屋にはこうした商いのためのスペースと、台所や居間などの居住空間が設けられており、部屋の数は全部で25室もあるのだそう。なかでも一番立派なのは「こちらの主座敷。過去にはここで、将棋の王位戦が行われたこともあるんですよ」と正木さん。
また、主屋の南側に立つ2棟の蔵では、地元の歴史民俗資料のほか、美馬市出身の画家・藤島博文が描いた日本画なども見ることができます。
+αでもっと楽しく!ガイドさんおすすめ情報
写真上:茶房では地元産の野菜や米を使った体に優しいランチをどうぞ。 写真左下:3棟の古民家をリノベーションした工房・茶房・休憩所が集う。 写真右下:工房では美馬和傘の伝統を受け継いだランプシェード作り体験が人気(詳細は要問合せ)
脇町にはまだまだ立ち寄りスポットがいっぱい!吉田家住宅を出て向かったのは、隣接する「美馬市観光交流センター」です。
こちらは3棟の古民家をリノベーションした複合施設で、工房・茶房・休憩所として利用されています。工房では、地元の伝統工芸である美馬和傘と、天然藍の染料を使った藍染めなどの体験を実施。また茶房では、美馬特産のスダチやブルーベリーを使ったフレッシュジュースのほか、有機野菜や阿波尾鶏など地元食材にこだわったランチを味わうことができ、脇町さんぽの休憩にぴったりです。
写真左:道の駅で人気のみまからアイス。特産のブルーベリーや鳴門金時なども販売。 写真右:ライトアップは毎日、夕暮れの時刻に合わせてスタート
地元みやげを手に入れたいなら、「道の駅 藍ランドうだつ」の売店へ。実はこの建物は昔、吉田家住宅の藍蔵として使用されていたそうです。みやげコーナーではさまざまな特産品が販売されていますが、青唐辛子から作られる美馬発祥の薬味「みまから」を練りこんだ甘辛アイスも人気だそう。
また、商家が軒を連ねる南町通りではライトアップもおすすめです。夜になると低い位置に設置された行燈風の街灯が灯り、さらに情緒があふれます。
最後はガイドを務めてくれた正木さんに、脇町の魅力を伺いました。「町歩きだけでなく、ご当地グルメや伝統工芸体験など、多彩な楽しみが揃っています。魅力いっぱいの脇町にぜひお越しください!」
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