第4話「ダイエットと遍路宿」
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トラベルライター 朝比奈千鶴さんによる、歩き遍路体験紀行を全5話に渡ってご紹介します。
歩き続けても痩せない理由
歩き遍路から帰ってきて痩せたか。その答えはNoである。八十八カ所すべて歩くならきっと痩せられたと思うが、23番までではいくら156.6km歩いたからといって体重はこれっぽっちも減ってくれないのである。
その大きな理由は、食べ物にある。炭水化物をしっかりと食べないと体が持ちませんよ、とばかりに食事を出してくれる遍路宿のお接待力。そのどれもが素晴しく、私はトラベルライターであるゆえ、入念に選んだほとんどの宿を外さなかったことを誇らしく思った。
遍路宿は宿坊を含め、和室が多い。一軒だけ、たまにはベッドで寝たかったので洋室の宿を選んだ。宿代は6,500円から7,000円くらいがほとんどで、夕食は大盛りご飯に天ぷら、刺身、煮物、焼き物、お味噌汁など盛りだくさん。採れたてのしいたけを囲炉裏で焼いて出してもらったときもあった。朝食は、魚、お味噌汁、納豆、お漬物。意外にも郷土料理らしきものに遭遇した記憶はなく、新鮮なお刺身を毎食のようにいただけたのは嬉しかった。お遍路さんだからといって精進料理のようなものを想像して夕食の席に着いたら、その豪華さに驚くだろう。翌朝はお接待としておむすびを持たせてくれたところが多く、お昼は眺めのよい場所で大きな塩むすびにかぶりついた。ここで、持参した保温性のある水筒が役に立ったので歩き遍路に出られる方はお忘れなく。
そんなこんなで、毎日荷物を背負って20km前後歩き、1,000kcal近い運動量を消費していた。おやつや飴などあれこれ持参したのにもほとんど手をつけていないのにもかかわらず、私の体重は1kgも減っていない。おかしいでしょ?!
四国別格20霊場第3番慈眼寺に穴禅定という行場がある。ここは、鍾乳洞の中の岩と岩の間を入っていくので、太っていては入れない。事前に寺の本堂のそばに通れるかどうか確認する石棒を通って穴禅定に入れるかチェックするのだが、ちゃんと通れたのでほっとした。以前、体を上手に動かせなくて岩の間に挟まって出られなくなってしまった肥満の人がいて大迷惑だったそうだ。次回、また来るようなことがあれば、今回以上にするすると通れるような体型を保っていたい! 香川県まで歩ききった後にまた来たい場所だ。
お遍路グルメいろいろ
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軽やかそうなお遍路さんの標識を眺めつつ歩く道。結構ハードに歩いているはずなのに、体重が減らないのはナゼ? でも、日数を重ねるごとに体が慣れていき、歩きやすくなってきた。
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ごくたま〜にスイーツを買っていたのが悪かったのか。しょうがない、徳島はおもちや団子などの餅米や小豆を使った素朴な和スイーツの天国だから、食いしん坊が手を出さないわけがない。
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とある宿の朝食はこんなふう。ひとり1おひつ。余ったご飯はおむすびにしてくれるが、生卵、シャケ、お漬物の存在がご飯を進ませる……!
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とある宿の夕食は魚づくし。どこに行っても刺身が大きくて驚いた。野菜も自家製のものを使っている宿が多かった。これでご飯がお変わり自由。さらにお酒まで飲んでいる人も多数。朝が早いため、夜は遅くならないが、いろんな人と話す機会があるため、夕食タイムは情報交換にも最適。
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行場である穴禅定の狭さはこんなものではない。匍匐前進したり、手を上げたり、体をくねくねと動かして岩と岩の間を行った先には、祈りの場があった。ちなみにこの顔は、笑っているのではなく通れなくて焦っている顔です。
トラベルライター 朝比奈 千鶴
ディスティネーション(訪問先)の自然や文化を体感することで、旅人が身近なものへのつながりを実感する旅を「ホリスティックトラベル」として提案している。
これまで、国内外の「人びとの暮らし」を取材し、文章や言葉を通して“暮らしの延長線にある旅”を、Webや新聞、雑誌などに綴っており、CS旅チャンネル「ホリスティックな週末」でのナビゲーター役もつとめた。